
世界で使用されているヨーロッパのフローリング規格を知る
フローリング・フロアタイルの
「AC(耐摩耗レベル)」を
解説!
フローリングやフロアタイルにおける「AC(耐摩耗クラス)」は、世界で使用されているヨーロッパのフローリング規格で、製品の耐久性を示す非常に重要な指標です。このページでは、ACランクの定義・試験方法・等級の意味・住宅や商業施設での選び方など詳しく紹介します。

フローリング・フロアタイルのAC(耐摩耗レベル)とは

「AC」とは、「Abrasion Class(アブレージョン・クラス)」の略で、主にヨーロッパ規格(EN13329)に基づいて定められたラミネートフローリング(積層タイプのフローリング材)の耐摩耗性能を表す等級です。
製品表面の耐摩耗性(すり減りにくさ)を、特殊な試験方法によって評価し、「AC1~AC6」の6段階に分類されます。数字が大きいほど高耐久で、商業施設などのハードな環境にも対応できるレベルです。
特に、商業空間や住宅などにおける床材選定の際に、その耐久性能を比較・検討するための信頼性の高い基準として国際的に広く用いられています。
ACクラスは、フローリング表面の装飾層や保護層がどれだけ摩耗に強いかを、標準化された摩耗試験(Taber Abrasion Test)により評価されます。これにより、床材の物理的な寿命や外観保持性能を客観的かつ再現性のある数値として示すことができ、特にラミネートタイプの床材においては、商品スペックの中核をなす技術的評価指標となっています。
AC等級の一覧と使用シーンの目安
等級 | 耐摩耗 レベル |
主な用途(目安) |
---|---|---|
AC1 | 低い | 住宅内の寝室など、 摩耗が少ない場所 |
AC2 | やや低い | 住宅内のリビング、 ダイニングなど中程度の摩耗 |
AC3 | 標準 | 一般住宅の全般、 軽度な商業エリア |
AC4 | 高い | 商業施設 (オフィス、小売店、カフェなど) |
AC5 | 非常に 高い |
大型商業施設、 ショッピングモールなど |
AC6 | 最高 | 駅構内や空港、 工場など極めて高負荷なエリア |
ACランクの試験方法
(ターバルテスト)
-
等級 摩耗試験回数の目安 AC1 約900回 AC2 約1,800回 AC3 約2,500回 AC4 約4,000回 AC5 約6,500回 AC6 約8,500回~ -
ACランクの耐摩耗性は、回転式摩耗試験機(Taber Abraser)を用いた「タバール試験(Taber Abrasion Test)」という方法で測定されます。
この試験では、標準化された研磨ホイールを一定荷重で床材サンプルに押し当て、一定回転数(レボリューション)ごとに表面の摩耗状況を観察し、装飾層の露出や変質が生じた時点をもって摩耗限界としています。
EN 13329では、この摩耗限界に達するまでの回転数に応じて6等級に分類されます。
(※試験条件により若干の変動あり)
AC等級が記載されていない
フローリングもある?
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このAC規格は、世界で使用されているヨーロッパのフローリング規格ですが、日本国内の一般的な複合フローリング、フロアタイル、無垢フローリングでは、AC等級が表示されていないことがほとんどです。つまり、AC等級は日本にだけ無い規格なんです。
これはACランクが「ヨーロッパ規格のラミネートフロア」に特化した基準であるためです。そのため、国内メーカー品や天然木フローリングの場合、耐摩耗性能は、JIS規格や製品ごとの耐摩耗試験結果で表されるのが一般的です。
ACランクと日本の
フローリング性能基準の違い
日本国内では「JIS規格」が中心
日本国内における床材評価ではJIS A 1453(耐摩耗性試験)などが採用されており、試験方法・評価基準が欧州規格とは異なります。このため、日本製複合フローリングなどではAC表記がされないことが一般的です。
そのため、日本製フローリングでは「AC3相当」「AC4相当」といった表記は原則行われていません。輸入品のみが、欧州規格に則ってACランクを表示しています。
日本では、フローリングの性能評価において以下のようなJIS規格(日本産業規格)が使われています。
JIS規格(日本産業規格) 】
項目 | 試験方法 | 内容 |
---|---|---|
耐摩耗性 | JIS A 1453 | 研磨紙で摩耗し、印刷模様が消えるまでの回数を測定 |
耐衝撃性 | JIS A 1454 | 重りを落として、凹みや割れを確認 |
耐汚染性 | JIS A 5705 | マジックインキなどを使って汚れの落ちやすさを評価 |
耐薬品性 | JIS K 5600 | アルコールや洗剤などに対する変色・劣化具合を評価 |
ACクラスとJIS耐摩耗試験との
参考比較
ACクラスとJISの耐摩耗性試験(JIS A 1453)との間に公式的な「直接換算表」は存在しませんが、試験回数(摩耗限界に至るまでの回転数や往復数)を基に、ある程度の目安としての相関を持たせることは可能です。
JIS A 1453では「等級表示」ではなく、摩耗に至る往復回数の実測値で示されるため、「F☆☆☆☆」のようなわかりやすいランク表示はありません。
一部のメーカーが「高耐摩耗」「標準耐摩耗」などの表現で製品を分類していることがあります。
AC クラス |
Taber試験の目安 (EN 13329) |
JIS A 1453相当の 摩耗回数(目安) |
想定される使用環境 |
---|---|---|---|
AC1 | 約900回 | 約100~150回 | 寝室など低トラフィック空間 |
AC2 | 約1,800回 | 約150~250回 | 一般居室など |
AC3 | 約2,500回 | 約250~350回 | 住宅全体、軽商業 |
AC4 | 約4,000回 | 約350~500回 | 商業施設(中負荷) |
AC5 | 約6,500回 | 約500~700回 | 高頻度通行の商業空間 |
AC6 | 約8,500回~ | 約700回以上 | 駅構内・空港・業務用など |
※JISの「摩耗回数」は、試験片に荷重をかけて往復させた後、印刷層や塗装層が摩耗したとみなされるまでの累積往復数を指します。上記は経験値ベースの目安であり、製品や材料構成により大きく前後します。
SPCフローリングと
ACランクの関係
SPCフローリングにも
ACランクがある?

SPC(Stone Plastic Composite)フローリングは、石灰石を主原料とした硬質なフロアタイルで、高い耐久性・防水性が魅力の新素材フローリングです。
日本でも最近人気が高まっており、特に欧州や中国で製造されたSPCフローリングでは、ACランクが明記されている場合があります。
■表面がメラミン樹脂系の「ラミネート仕上げ」の場合、ACテストが可能。
■AC2~AC3クラスのSPCフロアが多く、商業利用にも耐える性能です。
■「耐摩耗レイヤーの厚さ(例:0.3mm / 0.5mm / 0.7mm)」と併記されることも。
一方、日本国内で販売されているSPCフロアでは、「ACランク」が明記されていないケースが多く、実際の耐摩耗性は耐摩耗層の厚みや製造元の品質基準に依存します。
ACランクと耐摩耗層
(Wear Layer)の関係
耐摩耗層の厚さの目安
耐摩耗層が厚いほど高耐久になり、結果的にACランクも高くなります。
ただし、必ずしも耐摩耗層の厚さ=AC等級ではないので、併せて試験結果を確認するのが望ましいです。
耐摩耗層の厚さ | AC等級の目安 | 使用シーン |
---|---|---|
0.1~0.2mm | AC1~2相当 | 一般住宅の寝室・書斎など |
0.3mm | AC2~3相当 | 住宅全体、軽商業施設 |
0.5mm | AC3~4相当 | カフェ、小売店など |
0.7mm以上 | AC5以上相当 | 空港、駅構内、重歩行エリア |
耐摩耗層とクリア層は同じ意味?
一般的に「耐摩耗層」と「クリア層」という言葉は似た意味で使われることもありますが、厳密には異なる場合があり、耐摩耗層は、クリア層のうち機能的なコア部分だと捉えるのが適切です。そのため、製品スペック表では「耐摩耗層の厚さ」「ACランク」「UVコーティングの有無」を総合的に確認するのがベストです。
しかしながら、先ほども述べたように日本製のフローリングなどではAC表記がされないことが一般的で、耐摩耗層の厚みも表記されていないことが多いため、PVC素材を層にしている製品の場合は、「クリア層」の厚みを目安にすると良いでしょう。

キャスター椅子に対応する
ACランクの目安
キャスター椅子の使用は、床材にとってかなり過酷な条件です。摩耗だけでなく「圧力の集中+繰り返しの回転+局所的な摩擦熱」など、複合的な負荷がかかるため、単に「耐摩耗性が高い」だけでは不十分な場合もあります。
AC クラス |
キャスター椅子使用への推奨度 | 解説 |
---|---|---|
AC1~AC2 | × 不向き | 耐摩耗性が低く、短期間で劣化や剥離の恐れあり |
AC3 | △ 条件付きで可 | 軽度使用なら対応可能だが、マット併用推奨 |
AC4 | ◎ 一般的な事務用途に対応 | 中負荷のキャスター使用に耐える性能あり |
AC5 | ◎ 高頻度使用に強く推奨 | オフィス・会議室などでも長期使用可 |
AC6 | ◎◎ 産業用にも対応 | 空港や公共施設の重負荷にも対応できる最高等級 |
キャスター椅子対応可否は、ACクラスだけでは判断できないことも多いため、以下の要素にも注目する必要があります
表面の材質・処理
- メラミン樹脂(ラミネート)のような高硬度な表面はキャスターに強い。
- SPCなどは高硬度だが、表層コーティングによっては白濁や摩耗を起こすことも。
メーカーによる「キャスター試験」への合格表示
- ヨーロッパでは「EN 425:キャスター椅子試験(試験名:Castor Chair Test)」に合格しているかどうかが一つの目安。
- 国内でも、製品スペック欄に「キャスター対応」「椅子対応」と記載があるものは安心。
補助対策も有効
- 長期間使用する場合はチェアマットや透明マットを併用するとさらに安心。
- 特にクッションフロアやLVT系製品では必須です。
最低でもAC4以上が安心(オフィスや自宅ワークスペース)
AC5~AC6は業務用・商業施設にも十分対応可能
製品仕様で「EN 425対応」「キャスター試験済」の表記があればベスト
摩耗だけでなく、表面素材の耐へこみ性やコーティングの耐久性も重要
住宅用・店舗用
フローリングの選び方
住宅におすすめのAC等級
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一般的な家庭の床に使用する場合は、耐摩耗レベルAC2~AC3相当のフローリング・フロアタイルを選べば、十分な耐久性を確保できます。
小さなお子様やペットがいる家庭では、より耐久性の高いAC4を選ぶと安心です。
商業施設におすすめのAC等級
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日常的に人が出入りする小売店・飲食店では、耐摩耗レベルAC4以上のフローリング・フロアタイルを推奨します。ハードユースが想定される公共施設や、長期的な使用が前提の施設では、AC5~AC6相当の耐摩耗性能が必要になります。
「AC等級だけで選ばない!」
ACランクは、「表面の摩耗に対する強さ」を示すものです。 そのため、以下のような性能は別基準で確認が必要です。
- 耐衝撃性(へこみにくさ)
- 防水・耐水性
- 耐熱性(床暖房対応など)
- 滑りにくさ(防滑性能)
- 安全基準(F☆☆☆☆、Blue Angel、eco-Institutなど)
ACランクで選ぶ
フローリング・フロアタイル
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フローリング・フロアタイルのAC(耐摩耗レベル)まとめ
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AC(耐摩耗レベル)は、フローリングの摩耗に対する強さを数値で示した世界で使用されている指標です。日本国内では「JIS規格」が中心でAC表記がされないことが一般的なため、耐摩耗層やクリア層の厚みで判断しましょう。用途に応じて適切なランクを選ぶことで、長持ちし、快適な空間づくりが可能になります。住宅ならAC3相当、商業施設ならAC4以上相当の商品を選ぶと安心です。数値だけでなく、素材や他の性能とのバランスも確認しましょう。選定時の目安として活用すると、長持ちする床選びに役立ちます。

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