
時代とともに変化する
フローリングの構造を
徹底解説!
フローリングは「一枚板の無垢材」だけではありません。近年は複数の層で構成された複合フローリングも登場し、その構造の種類も様々です。このページでは、フローリングの基本構造から、時代とともに変化してきた素材選びの背景までをわかりやすく解説します。

フローリングの構造は主に2種類
無垢フローリングと複合フローリング

フローリングは、厚み方向の構造によって分類されます。JAS規格の中の定義では、フローリングは単層フローリングと複合フローリングに分けられます。単層フローリングとはいわゆる無垢フローリングのことを指します。それぞれの名前から想像できるように、単層フローリングは、1枚の板からできているフローリングのこと。複合フローリングは、複数の層で構成されたフローリングのことです。
単層(無垢)フローリングの
構造
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まずはイメージしやすい単層フローリングから説明していきます。単層フローリングとは、天然木をそのまま切り出し、サネ加工(接合部)を施して仕上げられたフローリングです。
断面を見てみると、1層構造になっているのがわかります。先ほど、フローリングの分類は厚み方向の構造(断面構造)による分類とご説明しました。実は単層フローリングは、表面からの見た目や接ぎ方によってさらに細かく分類することができます。
単層フローリングのタイプについて
単層フローリングを表面から見たイメージです。
断面構造は同じでも表面から見ると様々な種類があることがわかります。
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OPC
1本の無垢材をそのまま使用した高級タイプ。木目のつながりが自然で美しいのが特長です。
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UNI(ユニ)
短い木材を縦方向に継いだ標準タイプ。コストと品質のバランスが良いのが特長です。
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FJL
小さな木片を縦方向にも横方向にも繋げてできたものです。接合面をジグザグに加工することで強度を高めています。
複合フローリングの構造
複合フローリングを構成する
3つの要素
複合フローリングは、その名の通り複数の層を貼り合わせて構成されるフローリング材であり、主に次のような要素によって成り立っています。
1.表面層
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最も目に見える部分であり、フローリングの意匠性や肌触り、耐久性を左右する重要な層です。使用する仕上材によって、挽き板フローリング、突き板フローリング、シートフローリングの3種類に分かれます。
フローリングの種類
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挽き板フローリング
天然木を約2mm厚にスライスした挽き板を表面材に使用。複合フローリングの中で最も木質感を味わえます。
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突き板フローリング
天然木を約0.2mm厚にスライスした突き板を表面材に使用。自然な木目を楽しむことができ、挽き板フローリングよりも安価で手に入ります。
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シートフローリング
木目を印刷した化粧シートを表面材に使用。豊富なデザインと低価格が特長。
2.基材(中間層)
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基材は、フローリングの構造全体を支える中核部分であり、製品の強度や寸法安定性を大きく左右する重要な層です。
フローリングの中でも最も厚みを占める部分であるため、使用される材料によって価格帯にも大きな影響を与えます。
また、基材には木質素材が使用されるため、木材そのものの市場価格や流通状況に影響を受けやすいという一面もあります。
3.クッション材
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マンションや集合住宅で使われる直貼りフローリングには、裏面にクッション材が付いていることが一般的です。これは、下階への音の伝わりを軽減するための防音仕様で、主に発泡ポリエチレンやフェルト状のクッションシートなどの素材が用いられます。
遮音性能が求められる集合住宅では、管理規約により、フローリング材に一定の遮音等級(例:ΔLL(I)-4 や LL-45相当)を満たすことが求められるケースも少なくありません。
そのため、製品選定の際には、クッション材の有無や遮音性能の表示を確認することが重要です。
複合フローリングの
基材の種類を解説!
フローリング基材の定番はラワン合板
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フローリング構造の定番のかたちは合板を基材として使用した構造です。合板とは、単板(ベニヤ)を繊維方向が交差するように積層して接着した板材のことで、寸法安定性や強度に優れています。
特にラワン合板(南洋材合板)が多く使われ、プライ(層数)によって「5プライ合板」や「7プライ合板」などと呼ばれます。この構造は強度・安定性・施工性のバランスが良く、広く普及したスタンダードな構造と言えます。
ただし、ラワン合板は東南アジア諸国からの輸入に依存しており、森林保護や丸太輸出規制の影響で、近年では調達が難しくなってきており、徐々に他の構造に移行していっています。
いま主流になりつつあるのは
針葉樹合板+MDFのハイブリッド構造
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針葉樹合板の上にMDFなどの木質繊維板を貼り合わせた構造です。針葉樹は節が多く強度にバラつきが出やすいという特性がありますが、その弱点を密度が高く強度に優れた木質繊維板(MDFやHDF)が補う構成となっており、全体として高い安定性を発揮します。
国産の針葉樹合板や国内生産のMDFと組み合わせることで、ラワン合板に依存しない製造が可能となり、持続可能な素材選びとしても注目されています。
他にもある、
さまざまなフローリング基材
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MDFのみを基材に使用したフローリング
中密度繊維板(MDF)を単独で基材とした構造です。
コストが抑えられ、大量生産にも向いていることから、賃貸住宅やリフォーム用の製品として流通しています。ただし、耐水性にはやや弱く、水回りへの施工には注意が必要です。
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パーチクルボード(PB)を
基材に使用したフローリングパーチクルボードは、木材の端材や廃材を細かく砕き、接着剤と一緒に圧縮して成形した木質材料です。再資源化された材料を使用していることから、環境負荷を抑えたエコ素材として評価されています。
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集成材・積層材を
基材に使用したフローリング集成材や積層材を基材として使用する構造です。こちらは、単板をすべて同じ繊維方向で貼り合わせて作られるため、合板と比べると一方向への強度は高いものの、繊維方向による性能の差が出やすく、寸法安定性にはやや劣るというデメリットがあります。
かつては一定の需要がありましたが、現在では他の製品に比べて性能・コスト面での優位性が少なく、あまり市場で見かけることはなくなりました。
JASのフローリング旧分類とは?
JAS(日本農林規格)では、かつて複合フローリングの基材構造に応じて、製品を「1種・2種・3種」の3つに分類していました。
1種:合板を基材にした構造
2種:集成材を基材にした構造
3種:合板とMDFなどを組み合わせたハイブリッド構造
この分類制度は製品仕様が多様化されたことや、国際基準との整合性をとるためなどの理由により、2013年11月に廃止され、現在は統合された基準が使われています。
フローリングの豆知識
ラワン合板の減少と
フローリング業界への影響
かつて、日本の合板産業は、東南アジア産のラワン材(主にフィリピン・インドネシア・マレーシア)に強く依存していました。ラワン材は、木目が素直で加工しやすく、かつ強度と寸法安定性にも優れていたため、フローリング基材として理想的な材料とされてきました。
しかし、2000年代以降、供給国における森林資源の枯渇や環境問題の深刻化を受け、各国で丸太の輸出制限や禁止措置が強化されるようになりました。
フィリピンの例:
- 1990年代には、商業伐採の影響によって原生林が著しく減少
- 2000年代初頭には丸太の輸出を原則禁止
- ラワン合板の主産地だったミンダナオ島でも伐採が制限され、輸出用原料の確保が困難に
インドネシア・マレーシアの例:
- 合板や製材品の輸出を優先し、未加工丸太の輸出に高関税や数量規制を設定
- 国際的な「合法木材認証制度」(例:SVLK、FLEGTなど)への対応も進む中で、輸出先としての優位性は縮小傾向に
このような動きを受けて、日本国内ではラワン合板の安定調達が困難となり、価格の高騰にもつながりました。
その結果、下のグラフが示すように、合板用原木の供給構造も大きく変化し、2008年からは輸入材と国産材の割合が逆転しました。フローリング業界では、MDFや針葉樹合板などの代替素材への移行が加速しています。
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