フロアタイルの温度変化による伸縮とすき間の必要性

置敷きや原状回復施工で必ず考慮すべきポイント フロアタイル
(樹脂製フローリング)の
温度変化による伸縮と壁際の
すき間の必要性

樹脂でできたフロアタイル(樹脂製フローリング)は、木質フローリングと比べて温度変化による膨張が大きく、接着剤で固定しない限り、この伸縮を考慮して施工する必要があります。また、この伸縮は粘着剤やピールアップボンドで施工する場合も考慮が必要です。

フロアタイルの伸縮を
気にせず施工するとどうなるか

リサイクル素材を使用した
クリック式フローリングが
温度上昇による膨張で突き上げた
海外での実例

温度上昇による膨張で突き上げた海外での実例

写真は、リサイクルPVCを使用したSPC製クリック式フローリングです。温度上昇によるフローリングの伸長によって、クリック部分がつきあがっていることがわかります。写真の製品は、リサイクル材を使用しているため、製品としての膨張率が管理できていない例です。きちんとした製品であればここまでの現象は発生しにくく、極端な例です。
そもそも、伸縮しない素材であることが望ましいのですが、樹脂であるフローリングの温度に対する膨張を0にすることはできません。
伸縮を考慮すべきフロアタイル製品のほとんどには、「施工温度を15℃以上としてください」や、「各フロアタイルのすき間に名刺一枚分(0.2mm)のすき間を確保してください」などと記載されています。
施工温度などを守ることが難しい場合や、施工不良をなくすために壁際にある程度のすき間をあけておくことが一般的です。

フローリングと壁際の
適切なすき間はどれくらいか

適切なすき間は、部屋の大きさ、製品の線膨張率、施工時の気温、部屋の真夏の気温(床の表面温度)によって計算できます。ただし、この中の「線膨張率」はメーカーでも非公開のケースが多く、入手が難しいのが現状です。

アイコン

計算式は以下の通りです
(壁両側に均等にすき間をあける場合)

すき間 =
線膨張率 × 部屋の長さ ×
(最高気温 − 施工時気温) ÷ 2

具体例として、線膨張率1.5×10⁻⁵のSPC床材の場合、
(全てのSPCフローリングは同じではありません。)
部屋の長さ3.6m、施工時の気温23℃、最高温度50℃とすると、
約0.9mmのすき間を確保すればよいことになります。

壁際のすき間の自動計算

横方向L1の確保するすき間
縦方向L2の確保するすき間
自動計算することができます。

1~5の項目を入力し、最後に「計算する」ボタンを押してください。

お部屋のサイズ

1.お部屋のサイズ横方向:L1

mm

2.お部屋のサイズ縦方向:L2

mm

3.施工時の室内温度

4.その部屋の最高温度(床材の温度)の予想

※直射日光が当たる場合、室温より床材が約15-20℃高くなります。

5.フロアタイルの線膨張係数

×10-5 [℃-1]

参考:
クリックeuca(SPC製):1.8×10-5
置くだけeuca(PVC+グラスファイバー製):2.6×10⁻-5
一般的なPVCフロアタイル:6~8×10-5
置敷きフロアタイルのJIS合格基準値:6.0×10-5

計算結果

この条件における、壁際のすき間の推奨値は以下のように計算されます。

横(L1)方向のすき間は 1.9 mm
(左右で合計3.8mm)

縦(L2)方向のすき間は 1.9 mm
(上下で合計10mm)

上記のすき間がを壁際に確保することで、置敷きフロアタイルや、原状回復できるフローリングの施工において、熱膨張による突き上げの現象を抑止することが出来ます。 しかし、壁際のすき間は必須というわけではなく、次に説明する製品そのものが膨張をある程度吸収出来る能力を持つものがあります。

フロアタイル自体も
膨張を多少吸収できる

フロアタイルの種類
SPC PVC(LVT)
線膨張率
低い(伸縮しにくい) 高い(伸縮しやすい)
膨張吸収
しにくい(硬い) しやすい(柔らかい)

実際のところ、フロアタイル自体にも膨張の力を吸収する能力が存在します。
そのため、SPC製フローリング「クリックeuca」は施工温度と施工環境さえ守っていただければ、突き上げなどの事象が起きていないのです。
この能力は、硬いSPCでは弱く、柔軟なPVC性のフロアタイルのほうが吸収する能力は高くなります。しかし、柔軟性があるということは線膨張率が大きくなるという傾向もあります。
また、壁際ギリギリに施工したとしても、多少のすき間が空き、それが膨張の逃げの役割を果たすこともありますし壁自体も多少の膨張を吸収する能力があります。

フロアタイル自体の
膨張の吸収能力実験

写真のような実験装置を用意し、フロアタイルの長手方向に圧力をかけ、
温度上昇によるサイズ伸長のシミュレーション試験を行いました。

フローリングの長手方向に対してかなり強い圧力をかける
実験1

ルースレイフローリング
「置くだけeuca」の場合

  • 1220mmに対し、
    0.5~1.0mmの圧縮を行った直後

    1220mmに対し、0.5~1.0mmの圧縮を行った直後
  • 24時間経過後、
    ほぼフラットになった

    24時間経過後、ほぼフラットになった

PVC製グラスファイバー入りの置くだけタイプのフロアタイルです。少し圧縮したところで端部の浮き上がりが発生しました。そのまま静置すると自重により平坦になる特性が見られました。この平坦になる現象は製品の温度が高いほど製品の柔軟性が増すためより安定する時間が短くなります。つまり、製品の温度上昇が急激ではない場合、製品の浮き上がりよりも早く自重による平坦化が起こるため、一時的な浮き上がりも発生しないことも予想されます。実験によると、1220mmの製品サイズに対して0.5~1.0mmの圧縮をかけたところ、写真のような浮きが発生しますが、24時間後にはほぼ平坦になる特性がありました。(製品温度45℃において)

実験2

クリック式SPCフローリング
「クリックeuca」の場合

  • 935mmに対し、0.5mmまでは
    フラットを保持

    935mmに対し、0.5mmまではフラットを保持
  • その後、0.5~1.0mmの圧縮を行うと
    全体が突如跳ね上がった

    その後、0.5~1.0mmの圧縮を行うと全体が突如跳ね上がった

SPC製のクリック式フローリングです。
製品長さ935mmに対し0.5mm長さを圧縮し、24時間経過しましたが、クリック部分やその他の部分に不具合は見られませんでした。
これは、製品自体が0.5mmの膨張を吸収していることになります。
クリックeucaの場合0.5mmは温度変化に換算すると約35℃の変化幅に耐えたということになります。
また、さらに圧力をかけ続け、0.5~1.0mm収縮させた範囲で、クリックeucaの全体の反り上がりが発生しました。(写真参照)
この場合においても、クリック部分は安定して篏合し続けており、圧力を解放すると、もとの状態になることが確認出来ました。

実験3

製品性能の低い
SPCクリック式フローリングの場合

1220mmに対し、約0.5mmの圧縮で、クリック部分の破壊が発生した。

1220mmに対し、約0.5mmの圧縮で、クリック部分の破壊が発生した

SPCクリックでもクリック精度の低いものを選びました。クリックeucaと同じく短辺はPUSH-DOWN方式ですが、1220mmに対し約0.5mmの圧縮に到達したとき、クリック部分の損壊が発生しました。これは、クリック部分の精度が悪く、クリック部分が面では無く線としてぶつかりあい、クリックの内部で集中的に荷重がかかったために発生した現象だと考えられます。
同じクリック式であっても、製造工場によってその精度は全く異なります。RESTAではこのような製品のテストを行い、商品選定を行っています。

※上記の試験結果は、全ての環境において同じ現象を保証するものではなく、実験結果です。

まとめ

まず、きちんと製品を選ぶことが重要です。特に原状回復できるフローリングの場合は接着剤で固定しないため、その製品選びはとても重要です。見分けるポイントとして、商品選びの際にきちんと施工温度のことや、すき間に関する考慮の説明をされている商品を選ぶことです。例外として、発泡素材の樹脂性フローリング(例えば東リのピタフィー)などは、伸縮する力が弱いため考慮する必要性は低いです。

  • 温度上昇によるフローリング・フロアタイルの突き上げを無くすポイント
  • 温度上昇によるフローリング・
    フロアタイルの突き上げを無くすポイント

    • 施工時の温度を施工手順書通りにすること
    • その温度に材料の温度をなじませること
    • 極端に厚くなる場所(真夏の直射日光下など)を避けること
    • 上記のすべてが満足できない場合は、壁際にすき間を確保すること

これらのことにより、温度上昇による
フローリング・フロアタイルの突き上げをなくすことが出来ます。

  • 仕入れ開発担当
  • このページを書いた人

    株式会社RESTA

    仕入れ開発担当:
    小林

  • DIYショップですから、試験装置もDIYで作りました。
    置敷きフロアタイルや原状回復できるフローリングの最も重要な要素は、その製品の寸法安定性です。あまり市場にある製品の紹介では表面に出る数値ではありませんが、この安定が優れた商品ほど、長く安心してお使いいただけるフローリングに最も大切な要素だと考えています。

引用規格
日本工業規格 JIS A 5705:2016「ビニル系床材」
日本工業規格 JIS A 1454:2016「高分子系張り床材試験方法 」

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