
日本の暮らしとともに進化してきた床材のかたち フローリングの歴史【日本編】
今では当たり前に使われているフローリングですが、日本の住まいに広く普及するまでには、実は長い歴史がありました。このページでは、縄文時代から現代まで、日本の住まいの変化とともに歩んできたフローリングの歴史を、わかりやすくご紹介していきます。

原始の住まいと床の始まり
火を囲み、地面に直接座る生活
縄文時代(約13,000年前~紀元前4世紀)
-
-
縄文時代の人々は、竪穴式住居で生活していました。
床は地面そのままで、囲炉裏(いろり)を中心に火を焚き、直接土の上に座ったり寝たりしていました。このころ、床材という考えはなく、自然と一体になった暮らしが営まれていました。
床文化のはじまり
柱の上に板を張った「床」が誕生
弥生時代(紀元前4世紀~3世紀)
-
-
弥生時代に入り、稲作が普及すると、人々は収穫した米を守る必要に迫られました。
そこで登場したのが高床式倉庫です。
地面から柱で建物を持ち上げ、その上に板を張ることで湿気・害虫・小動物を防ぎました。
やがてこの高床構造は、住宅にも応用されるようになり、人が「地面ではなく床の上で生活する」文化が生まれます。
板の間文化の誕生
古墳~飛鳥~奈良時代(3世紀~8世紀)
-
-
古墳時代から飛鳥時代にかけて、政治・宗教の中心である宮廷や寺院では、さらに発展した板張りの床(板の間)が使われるようになります。
建築技術の進歩により、厚い木板を隙間なく敷き詰めた美しい床が実現しました。奈良時代の正倉院にも見られるように、板張り床は「格式の高い空間」の象徴となり、土間とは明確に区別されるようになります。この時代、床は単なる生活基盤ではなく、社会的地位や清浄さを表す存在へと進化していきました。
日本独自の床文化の発展
畳文化の誕生
平安~室町~江戸
-
-
平安時代には、貴族たちの寝殿造りの中で、広い板の間に「畳」が置かれるようになりました。
平安時代の畳は、現在のように敷き詰めるものではなく、持ち運んで使う「家具的な扱い」で、上級者が座ったり寝たりする特別な場所を示すものでした。
近代におけるフローリングの
登場と普及
洋間文化とフローリングの登場
明治~戦前
-
-
明治維新を境に、欧米の建築様式や生活文化が急速に日本に広まりました。西洋風の住宅建築では、応接間やダイニングに寄木張りやオイル仕上げのフローリングが採用され、これが「洋間」として一般的に認識されるようになります。
ただし当時は、一般庶民の住宅ではまだ畳敷きの和室が主流であり、フローリングは「来客用の部屋」「お客様をもてなす場」として限定的に使われていました。
また、冷たく硬い床材であるため、ラグやカーペットを部分的に敷いて使うのが普通でした。
フローリングの普及とカーペット流行
戦後~昭和
-
-
戦後、欧米の影響を受けたモダン住宅が登場し、1950~70年代には「応接間」や「洋室」のある間取りが流行。
この流れの中で、全面カーペット敷きの部屋が“新しいライフスタイル”の象徴となりました。たとえば、当時の高級分譲マンションなどでは、洋室全面にカーペットが標準仕様となっていた例も多くあります。
現代におけるフローリングの
標準化と多様化
和室を設けないスタイルも一般的に
平成~令和
-
-
平成以降、フローリングは住宅の主要な床材として急速に普及し、リビングだけでなく寝室・廊下・子ども部屋などにも標準採用されるようになりました。特に2000年代以降の新築マンションでは、和室を設けない「オールフローリング」スタイルが一般的となり、住宅の洋風化がさらに進んでいます。
フローリングの種類も多様化
平成~令和
-
-
一方で、生活スタイルや価値観の多様化にともない、フローリングの種類や性能にも広がりが見られるようになりました。天然木の無垢材、突き板・挽き板などの複合フローリングに加え、塩ビ系、SPCフローリングなど、用途やニーズに合わせて選べる選択肢が格段に増えています。
さらに近年では、抗菌・耐水・耐傷・低VOC・サステナブル素材といった機能性重視の床材も登場し、住宅性能と快適性を両立するフローリングが求められる時代へと進化しています。
多様化したフローリングの種類
現代のフローリングは、構造・素材・施工方法の違いによって多くのバリエーションが登場しています。木の質感を楽しめる無垢フローリングから、施工性を重視したはめ込み式までライフスタイルや設置場所に応じて最適な種類を選ぶことができます。
-
海外で一般的だった施工方式が2000年代以降日本でも普及。専用のサネ形状で工具不要、接着剤不要のため、DIYユーザーにも人気が高まっています。
フローリングもDIYで
リフォームする時代に
平成~令和
-
-
フローリングのDIYはもともと欧米ではごく一般的な文化です。アメリカや北欧では、床の張り替えをはじめとした住まいのメンテナンスを自分で行うのが当たり前とされ、クリック式や置くだけタイプなど、「自分で貼ることを前提とした床材」が豊富に流通しています。
こうした海外の住文化は、2000年代以降、日本のリフォーム市場にも大きな影響を与えました。現在では、賃貸住宅でも原状回復できる床材や、接着剤不要で貼れるDIY対応商品が多数登場し、フローリングの貼り替えは「専門業者に頼むもの」から、「自分で楽しむもの」へと大きく変わりつつあります。
日本の床文化は、縄文時代の地面生活から弥生の高床式、平安の畳文化を経て発展してきました。
明治以降はフローリングが加わり、平成には住宅の標準仕様に。
今では素材も施工方法も多様化し、自分で床を貼り替えるDIY文化も普及しつつあります。
時代とともに進化してきたフローリングは、これからも暮らしに合わせて変わり続けるでしょう。
© 2025 RESTA. 無断転載を禁じます。All rights reserved.

フローリングおすすめコンテンツ
PICK UP CONTENTS